越前蟹(えちぜんがに)の宿おすすめの「活蟹(かつカニ)しゃぶ」とは、できるかぎり新鮮な、なるべくなら水槽から上げたばかりの「生きた越前蟹(えちぜんがに)」をその場で蟹の刺身を食べるような姿に捌いて、鍋に出汁を張り、お肉のしゃぶしゃぶのように蟹の足身をしゃぶしゃぶして食べる越前蟹(えちぜんがに)料理の一つです。
上の写真は、越前蟹(えちぜんがに)の宿あらやの店先にある水槽です。11月から3月の越前蟹シーズンは常に水槽に蟹を活かしてあります。このような生きた蟹を間近でご覧になったことがあるでしょうか?越前蟹も含めて蟹は身に旨み成分が多く含まれており、その旨み成分は死ぬと臭みを発する元になります。魚と違い蟹は足がはやく、内臓などはすぐに悪くなりますので、一般的に冷凍の形で加工し保存されて流通します。旨みのことを言えば、生きている蟹と冷凍の蟹では全く味が違います。生きている蟹を捌いて食べた経験がある方はよくご存じと思います。裏返せば、本当の越前蟹(えちぜんがに)を味わうなら冷凍の蟹ではなく、生きている蟹(=活蟹、かつカニ)を捌いて調理して食べないと、ブランド蟹と呼ばれる価値はないと言えます。その意味で非常にぜいたくな食品だと思います。この活蟹を味わうのに「活蟹しゃぶ」という調理法はとてもおすすめだと思います。
上は越前蟹(えちぜんがに)の宿あらや主人が蟹の競りに参加したり、宿で調理をしている写真です。「活蟹しゃぶ」おすすめの調理法としては、なるべく鮮度の良い、できれば生きているに近い状態の蟹を用意します。その蟹を、甲羅・胴体・脚の部位に切り分け、甲羅は蟹味噌を残して他の内臓は捨てます。脚の付け根になっている胴体部分は、魚のえらにあたる「がに」を捨ててから二つに割ってください。このとき「がに」は魚のえらにあたるとお話した通り、フィルターになっている部分ですので、ゴミ・泥・微生物が付着していることがあるため、必ず取り外して捨ててください。蟹の脚は表面を削いでお刺身を食べるような形にします。蟹の脚の表面に包丁を沿わせて、脚の付け根に向かって表面を削ぐのですが、この箇所がテクニックが必要なので、一般的に慣れが必要なところです。蟹を捌いたことのない、初めての人ならハードルが高いかもしれません。
上は捌き終わってお皿に盛りつけた状態の越前蟹(えちぜんがに)です。甲羅・胴体・脚の部位に分けてあり、蟹味噌のみ残した甲羅、二つに分かれた胴体、刺身で食べられる状態になった脚のそれぞれの部位が写真から分かるかと思います。ここまでくれば、後は鍋に一般的なカツオと昆布の出汁(だし)をはってしゃぶしゃぶをする準備ができました。
鍋の出汁が沸いたら、甲羅に残してあった蟹味噌(かにみそ)を入れます。蟹味噌(かにみそ)の味というと、回転寿司のネタや、酒のおつまみになっている蟹味噌の缶詰の味を思い出す方が多いようです。蟹味噌は蟹の肝臓にあたり、一杯の蟹からほんの少量しか取れず、蟹の部位の中で最も鮮度が失われやすい、臭みを発しやすい部位です。ですので、回転寿司のネタや缶詰になっている蟹味噌は悪くならないように保存のための薬剤を入れて加工し、調味した代物であり、本当の捌いてすぐの蟹味噌は上の写真のような色をしています。この捌きたての蟹味噌は鍋の出汁と合わさり、深い味を出してくれる最高の調味料となります。蟹味噌がどうしても嫌い、という方は入れない方がよろしいかと思います。蟹味噌が大好きな宿のお客様がおられまして、必ず蟹味噌を最後まで残しておいて、脚の身をしゃぶしゃぶした後の鍋にご飯を入れ、蟹味噌の雑炊を味わうのが楽しみという方もおられます。
捌いた蟹の脚を持って、沸いた鍋出しでしゃぶしゃぶすると、熱で、ぱっと身に華が咲きます。活の越前蟹なら、鮮度が高いのでキュッと身が縮んで華がきれいに咲きます。華を咲かせてポン酢で食べるのですが、これがなかなか楽しいんです。美味しいですね。味だけでなく、目でも楽しませてくれます。
「かに鍋」と「蟹しゃぶ」の違いは、「かに鍋」が他の野菜などの具材と一緒に蟹を入れて、最初から全てを煮込み、全体を味わうのに対し、「蟹しゃぶ」は脚を一本食べてから、次の一本に行くという風に順番に食べていきます。かに鍋ですと、すべて煮込んでしまうので、どうしてもカニの味が出汁に出てしまいます。「蟹しゃぶ」の良いところは、好きなとき、好きな火加減で、刺身の状態にある脚の身を一本ずつ味わうことができる点です。半生で食べることもできますし、ゆっくり火を入れて食べることもできます。時間を置いて食べても美味しさが変わらず、他の人と鍋を囲んでいても自分の好きな火加減で食べられる。ここが「越前蟹の宿おすすめの調理法」としてご紹介したいところなのです。
なんといってもしゃぶしゃぶした最後の蟹味噌の入った鍋に、ご飯を入れてつくる雑炊が美味しいですね。「越前蟹(えちぜんがに)を最後まで味わった」という感慨があります。宿のお客様も雑炊までを楽しみにされている方が大勢いらっしゃいます。調理する宿も最後まで召し上がってくださるとうれしいものです。そういう蟹を楽しみにされている常連の方と毎年お会いして、今年はこんなだった、こっちはどうだったか、と尋ねられて、お話をするのが宿の楽しみの一つですね。
ここまで読まれた方ならお分かりと思いますが、「活蟹しゃぶ」には鮮度の良い蟹が必要です。ご家庭で召し上がるなら、生きた蟹を買ってくるか、取り寄せるほかないと思いますが、しゃぶしゃぶできる蟹というとかなり大きめの蟹になると思います。毛ガニくらいの大きさでは鍋にできても、しゃぶしゃぶは難しいでしょう。鮮度の良い大きい蟹が手に入っても、蟹を捌いてお刺身の状態まで持っていくことが難しいかもしれません。ぜいたくなお料理ですので、地元まで足を延ばして、ご自分へのご褒美として旬の味を召し上がって頂きたいと思います。
福井県坂井市三国町の東尋坊の近く、海を一望できる場所に「三国温泉 お宿あらや」がございます。11月から3月は、越前蟹を水槽で生かし、その場で捌いてお出しする「越前蟹の宿」として営業しております。ぜひお宿あらやで「おすすめの活蟹しゃぶ」を味わってください。皆様のお越しをお待ちしております。
越前蟹の宿あらやでは、お客様に生の越前蟹(えちぜんがに)をお見せしてから調理します(一部にお見せしていないご宿泊プランもございます)。結婚記念日などのアニバーサリーでお越しになるお客様、記念に蟹のお写真を撮られるお客様、よく蟹の味をご存知の常連のお客様のお気持ちに応えるためにも、生の蟹をお見せすることは「越前蟹の宿のこだわり」として今後も続けていきたいと思っています。
この「活蟹しゃぶ」動画は、あらや全館リニューアル以前に撮影したものです。リニューアル以前は日本的な民宿でしたが、現在は「現代的な和モダンの宿」に生まれ変わっています。この動画では、特特大サイズ=皇室献上蟹クラスを使用しています。