「越前ガニ料理」王道のゆでがに。水槽から上げた新鮮な越前ガニをそのまま沸騰したお湯の中へ。しかし、水揚げされる全ての越前ガニが「ゆでがに」に向いているわけではありません。
甲羅に「黒いブツブツ」があるカニが良いって言いますよね。「黒いブツブツ」は海藻ではなく、「カニヒル(カニビル)の卵」です。カニヒルは福井沖の海底にたくさん生息していまして、カニの甲羅に吸盤でくっついて、卵を植え付けます。確かに、大きい越前ガニにはびっしりとくっついていて、脱皮してからの成長の度合いがわかります。ですが、見た目で良し悪しを判断するのは怖いのです。痩せているカニもあれば、肥えているカニもいます。私は手に持った感触で良し悪しを判断したい。その感触を磨きたい、といつも思っています。
あらやでは、ゆでる前の越前ガニをお客様にお見せします。お見せしてからゆでるので、お待たせしますが、ゆでたての越前ガニをお出しします。どうして越前ガニを見せるのか?越前ガニはとても仕入れ値が高いのです。儲けようと思えば、セリ値が安いときに一度に買い込んで、冷凍すれば良いのです。楽しようと思えば、先にゆでて、ゆで置きして出せば良いのです。『調理する前の越前ガニを見せる』ということは、日ごろからカニを生かしておいて、お客が席に着いてから、生簀からカニを出し、お見せして、それから調理すること。お客が50人いたら、こんなのんびりしたことはできません。あらやは一日4組のご昼食・ご宿泊。多くても10名様ほど。みなさん、本場の越前ガニを食べに来ておられる方ばかり。遠くから宿に来てくださる方に対して、楽な仕事はできません。
私はいつも「越前ガニをどうゆでるのがベストなのか?」考えます。魚屋さんはゆでがにを店頭に並べるためカニカゴでいっぺんに沢山のカニをゆでますが、私はその時その場でカニを調理してお客さんにお出しします。なので、自分で選んだカニの大きさや状態を見ながら塩加減や湯量や時間を変えて、一杯ずつなるべく丁寧にゆでようと考えています。
「越前ガニ料理」王道のゆでがに。旨みがギュッと凝縮された、これぞ冬の味覚の王者の美味しさです。アツアツのうちにお客様にお出しします。